上昇が続くフィリピンの住宅・コンドミニアム市場

フィリピンの住宅市場についてまとめられた記事がありましたので、ご紹介させて頂きます。

 

フィリピンの不動産マーケット 中心部は伸び悩み、地方はアップトレンド

中心部の高級コンドミニアムの価格の2019年の伸びが0.87%と前年伸び率の15.55%に比較し、大きく減速した。2010年から2018年まで132%成長した価格が、アメリカ・中国の貿易摩擦の影響で大きく減速している。(ちなみに2019年のデータのためコロナウィルスの影響はほぼありません。)

それと比較し、フィリピン全土の住宅の住宅価格の高騰は続いている。住宅用不動産指数は2019年から2019年第3四半期までに10%(インフレ調整済み)も上昇しているという。

 

全体的な不動産価格は上昇傾向を維持

コロナウィルスの影響で、2020年は減速が予想されるが、IMFはコロナウィルスの影響を加味しても6.3%のGDPの成長を予測、フィリピン政府はそれを上回る6.5%から7.5%の成長を見込んでいるという。

これはわたくしも驚いたのですが、フィリピンの住宅市場は、アジア通貨危機後に比べ、インフレ調整を行うと、まだ10%超下回っている価格とだという。

フィリピンの不動産価格に前向きな話としては、2020年1月にREITの障害となっていた税率や要件を緩和することが決まりました。REITが組成されることで、不動産価格が安定、上向きな成長をすることはほかの国でも見られる傾向です。

コンドミニアムの供給は引き続き続いており、2019年に13万戸に達した総供給量は2022年末までには、15万8000戸まで伸びることが予想されている。その中心となるエリアはカジノやエンターテインメントのエリアとして発展しているベイエリアと、高級住宅地としてのBGC(フォートボナフォシオ グローバルシティ)。この2つのエリアで2020年から2022年の80%供給を占めるという。

ただ、2019年の住宅建築許可は部屋数、面積数、価格ベースでも落ち込んでおり、2022年以降の供給は少し抑えられる可能性もあるという。

 

低い空室率 賃料は強い上昇傾向

高級コンドミニアムの賃料は大きな上昇がみえる。メトロマニラの平均で2019年第三四半期から第四四半期の間に1.9%の上昇、ロックウェル、マカティ中心部、フォートボナフォシオといったところでは3-5%の賃料上昇もみられるという。この賃料上昇の傾向は2020年から2022年まで年7.5%程度の成長率で上昇が続くとみられている。

空室率も低い水準を保っており、1.5%のケソン市を筆頭に、マニラ市で1.8%、フォートボナフォシオがあるパサイ市で1.9%となっている。

投資における表面利回りは、7%とほかのバンコクやクアラルンプールといったほかの都市に比べて高いが、外国人に適用される所得税率やキャピタルゲイン税(取引税)ゆえ、実質利回りは7%からかなり割り引かれたものになると考えられる。

 

フィリピンの住宅市場が抱える問題

住宅ローン

住宅ローンには問題を抱えている。住宅ローンを提供してる大手銀行は限られており、30年の貸出期間、90%の貸出比率が提供される可能性があるにもかかわらず、ほとんどのローンは短期間の融資にとどまっている。銀行が差押プロセスが確立されていないため長期間を要すること、権利証の偽造といった問題で消極的になっていることが原因とされている。銀行同士が共謀することも多く、良い条件を提示する競争原理も働いていないという。

2019年住宅ローンの残高は148億ドルにとどまっており、適用金利は1年固定金利で5-8%、5年固定金利で8-10%で提供されている。(日本の住宅ローンの総残高は2017年末で約1.4兆ドル程度)

 

需要と供給のミスマッチ

フィリピンの住宅は大きく3つに分けられると考えられており、

・富裕層や駐在員を対象とするハイエンドマーケット

・中間層が住むミドルエンドマーケット

・大半のフィリピン人が住むローエンドマーケット

ミドルエンドマーケットの対象の住宅は、住宅ローンの額が200万ペソ程度、毎月の返済で1万ペソ程度が必要とされる物件を想定している。(価格として2-300万ペソ程度でしょうか。)

 

ミドルマーケットは供給過多

ミドルエンドマーケットの物件は供給過剰に陥っていると考えられる。

ミドルエンドマーケットといわれる対象世帯には海外で働く労働者達が大きな割合を占めており、その海外労働者からのフィリピン国内への送金額は300憶ドルを2019年で超えているとされています。アヤラ、メガワールド、DMCIといったフィリピンの大手デベロッパーは、海外労働者が住む地域でも積極的な販売活動を行ており、300憶ドルの送金額のうち、60%は不動産関連の支払いにまわっていると推測されるという。

2001年から2014年での住宅供給戸数は45万戸を超え、それ以降約10万戸が供給され続けています。一方、ミドルエンドマーケットの住宅を買うことができる世帯数の割合は27.5%と推測され、また、これらミドルエンドの世帯はすでに住宅を購入済みとも考えられる。結果、ミドルエンドマーケット対象世帯の10%程度のみが、新規供給されるコンドミニアムの需要者となることが想定されるため、供給過剰と考えられている。

また、労働先でのビザ等の問題、世界経済全体のスローダウンを原因に、海外労働者からの送金額は2009年までの平均15.5%の伸びから、2009年以降平均5.7%の伸びに落ちこんできている。これもミドルマーケットを対象とした住宅にブレーキをかける要因になると考えられる。

 

ローエンドは供給不足

ローエンドマーケットでは住宅不足が深刻で、400万戸の不足があるといわれています。30万世帯、マニラの人口の8.7%もの人たちがスラム街と呼ばれるような劣悪な環境で暮らしています。これらのローエンドマーケットに対し、政府及び政府系金融機関Pag-Ibigファンドは低所得者層向けの住宅開発、特別融資の提供も行ていますが、仕事に便利な立地に建設されることがなく、まだまだローエンドマーケットの住宅問題が解決に向かっているとはいえる状況ではありません。

 

ドゥテルテ大統領が進めるインフラ開発

ドゥテルテ大統領のBuild Build Build プロジェクトは計画の不備やコストの問題などで遅れが生じたことから一時期避難の声もあがりましたが、空港、港、鉄道、道路、エネルギー施設などインフラ関係の整備のプロジェクトが100件ほど進めらています。そのうち半分は2022年6月のドゥテルテ大統領の任期前に完了する見通しとされています。

この大規模プロジェクトは2022年までGDPを3-7%引き上げるとされており、一方、これらによる積み重なる財政赤字は心配をされています。

 

本記事は以下のニュースを参考に、一部私見も含め記載させて頂きました。

(参考:https://www.globalpropertyguide.com/Asia/Philippines/Price-History